難病である潰瘍性大腸炎(UC)の小児患者さんとそのご家族にとって、大きな希望となる最新ニュースが届きました。ヤンセンファーマは2026年1月23日、成人UC治療薬として広く使われているヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体、「ステラーラ」(一般名:ウステキヌマブ)について、潰瘍性大腸炎における小児適応(2歳以上18歳未満)の追加を国内で申請したと発表しました。
小児UCは成人よりも症状が重く、成長発達への影響も懸念されるため、より強力で長期的な効果が期待できる治療選択肢が求められてきました。既存の治療薬が効きにくい場合や、通院負担が大きいケースにおいて、この申請は治療戦略を大きく変える可能性を秘めています。
この記事では、このニュースの背景、臨床的な意味合い、そして患者さんとご家族が次に取るべきアクションについて詳しく解説します。
- この記事でわかる3つのこと
- 成人UCで実績のある「ステラーラ」が小児UCの治療薬として申請された背景と理由。
- 小児期発症UCの患者さんの日常生活(寛解維持)に、どのような変化が期待できるか。
- 今後の審査プロセスと、主治医に相談するための具体的なポイント。
今回のニュースで押さえるべきポイント
ヤンセンファーマによる「ステラーラ」の小児UC適応追加申請について、重要な点を整理し、その意味を解説します。
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対象となるのは2歳から18歳未満の小児UC患者さんです。
潰瘍性大腸炎の小児期発症は、成人発症に比べて重症化しやすく、薬物治療が効きにくい難治性(なんちせい)の経過をたどる傾向があります。この層に対し、成人で有効性が確立されている生物学的製剤が、新たな治療選択肢として加わることは、特に重症の患者さんの治療成績向上に直結する可能性を秘めています。
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「寛解導入療法」と「維持療法」の両方が申請対象となっています。
寛解導入療法(かんかいどうにゅうりょうほう)とは、活動期の炎症を抑え、症状を落ち着かせるための初期治療です。維持療法(いじりょうほう)は、症状が治まった状態(寛解)を長く保ち、再燃(さいねん:症状が再び悪化すること)を防ぐための継続治療を指します。ステラーラは、病勢をコントロールする初期段階から、長期的な安定を目指す段階まで、継続的な使用が期待されています。
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本剤はインターロイキン(IL)-12およびIL-23を標的とする生物学的製剤です。
ステラーラは、炎症を引き起こす特定のタンパク質(IL-12/23p40)の働きを阻害することで、腸管の炎症反応を抑制します。既存のバイオ製剤(例:TNF-α阻害薬)とは異なるメカニズムを持つため、既存薬で効果が得られなかった患者さんにとって、次の有効な治療手段となる可能性が示唆されます。
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現時点では「申請」段階であり、いますぐ使用可能になるわけではありません。
今回のニュースは規制当局(厚生労働省)への承認申請を行ったという事実です。実際に医療現場で小児患者さんに使用できるようになるには、国の審査を通過し、正式に承認される必要があります。通常、このプロセスには一定の期間を要するため、今後の進捗に注目していく必要があります。

治療の現場と患者さんの生活に与えるインパクト
この適応拡大申請は、単に治療薬が増えるという以上の意味を持ちます。小児UC患者さんと、治療を担う医療者、そして日本の医療全体に、以下の3つの大きな変化をもたらす可能性を秘めています。
患者視点: 日常生活における「安心感」の向上
小児UC患者さん、特に思春期や活動的な時期にあるお子さんにとって、最も重要なのは「再燃の恐怖」と「トイレの不安」から解放されることです。病気が安定し、炎症が抑えられた状態(寛解)が長く続くことで、学校生活、部活動、友人との交流など、健常な小児と変わらない日常を送ることが可能になります。また、ステラーラは投与間隔が比較的長い治療法であり、承認されれば、通院や注射の頻度が減り、お子さんやご家族の負担が軽減されることも期待できます。この「日常の不自由さからの解放」こそが、小児UC治療における最大のゴールの一つです。
医療者視点: 治療戦略の多様化と最適化
これまでの小児UC治療では、使える生物学的製剤の種類が成人より限られていました。しかし、ステラーラという異なる作用機序を持つ薬剤が加わることで、治療選択肢が広がり、個々の患者さんの病態や既存薬への反応性に応じて、より最適な治療法を選べるようになります。もし既存のTNF-α阻害薬などで効果が不十分だった場合でも、ステラーラへの切り替えで寛解を目指せる可能性が高まります。これは、医療者にとって難治性UCへの挑戦権が増えることを意味します。
社会・未来視点: 小児IBD治療のトレンド変化
小児期発症のIBD(炎症性腸疾患)は、体が成長する時期に炎症が起こるため、将来的な合併症や手術のリスクが高く、長期予後(治療後の見通し)が悪化しやすいとされています。強力な治療薬を早期から導入し、深い寛解(粘膜治癒:腸の粘膜レベルで炎症が治まっている状態)を達成することは、将来のQOL(生活の質)を大きく左右します。この適応拡大は、小児IBD治療において、「早期からの積極的な治療」のトレンドを加速させる重要な一歩となるでしょう。
なお、UCの治療には、西洋医学の認可薬以外にも、様々なアプローチが試みられています。筆者自身は、青黛(セイタイン)という生薬を服用することで、潰瘍性大腸炎の症状を抑えることができています。しかし、これはあくまでも認可されている薬や生薬ではないため、利用する際は、必ず専門の医師や薬剤師に相談した上で、自己責任で利用するよう重ねてお願い申し上げます。治療の選択肢は増えていますが、基本は主治医と連携し、エビデンスに基づいた治療を進めることが大切です。
期待できること: 成人で実績のある効果と、投与頻度の低さから、小児患者さんの身体的・精神的な負担が大幅に軽減される可能性があります。
現時点では不明なこと: 他の小児UC治療薬と比較した際の、長期的な安全性や有効性のデータは、今後の臨床現場での経験によって蓄積されていきます。
この情報の正確性
本ニュースは、企業の規制当局への「申請」という公的な行為に基づいています。そのため、情報の透明性や信頼性は高いと判断できますが、その医学的根拠についても客観的に評価することが重要です。
- 情報の一次情報源: ヤンセンファーマによるプレスリリース(企業発表)です。
- 研究の根拠: この申請は、潰瘍性大腸炎を対象とした国際共同第3相試験(RCT:ランダム化比較試験)の結果に基づいています。RCTは、薬の有効性と安全性を評価する上で最も信頼性の高い研究デザインです。
- 対象患者層: 小児UC患者(2歳以上18歳未満)です。承認されれば、この年齢層に特化した治療薬として利用可能になります。
- 比較対象の有無: 第3相試験では、プラセボ(偽薬)と比較して、ステラーラが統計学的に有意な寛解導入効果および維持効果を示したとされています。
この情報は、企業が公に発表した厳格な臨床試験の結果に基づいたものであり、高い信頼性スコアを持ちます。しかし、覚えておくべき最も重要な点は、今回は「承認申請」というプロセスの一段階であるということです。個々の患者さんへの具体的な適応や、使用の可否については、あくまで主治医の判断が必要となります。
誤解を防ぐための注意点
新薬のニュースは大きな希望をもたらしますが、誤解や過度な期待は避け、冷静に対応することが大切です。特に、以下の3点について十分にご注意ください。
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「誰にでも効くわけではない」ことを理解する
ステラーラは画期的な治療薬ですが、全ての患者さんに効果があるわけではありません。UCの治療は、炎症のタイプや重症度によって最適な薬剤が異なります。主治医と相談し、ステラーラがご自身のお子さんの病態に本当に適しているか、慎重に検討する必要があります。
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副作用の可能性についても主治医と話し合う
生物学的製剤であるステラーラには、成人UCの治験を通じて確認された副作用や、感染症のリスクなどが存在します。特に小児への投与にあたっては、成長への影響も含め、期待できる効果と潜在的なリスクを十分に比較検討し、納得した上で治療を開始することが重要です。
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自己判断での既存治療の中止は絶対に避ける
このニュースを読んだからといって、現在受けている治療を自己判断で止めたり、変更を急いだりすることは大変危険です。症状が悪化したり、再燃を招いたりする可能性があります。治療の変更は、必ず主治医と相談し、最新の診断情報と照らし合わせて計画的に行ってください。
Q&A
Q1: 「ステラーラ」は、どれくらいで小児UCの治療に使えるようになりますか?
A1: 今回の発表は「申請」であり、具体的な承認時期は未定です。日本の医薬品の審査プロセスは通常、数ヶ月から1年以上の期間を要します。現時点で「〇月〇日から使える」と断言することはできませんが、承認され次第、厚生労働省や製薬会社から正式な情報が発表される予定です。焦らず、定期的に主治医に最新の状況を確認することをおすすめします。
Q2: 今、別のバイオ製剤(生物学的製剤)で治療を受けていますが、すぐに「ステラーラ」に切り替えるべきでしょうか?
A2: 現在の治療で安定した寛解(症状が治まっている状態)が得られている場合は、原則としてその治療を継続することが推奨されます。ステラーラは、主に既存の治療薬で十分な効果が得られなかった患者さんにとって、新たな治療の選択肢として加わる可能性が高いです。切り替えを検討すべきかどうかは、現在の薬の効果や副作用、病状の安定度、そしてステラーラが正式に承認されてからの小児での用法・用量などを踏まえ、必ず主治医と相談して決定してください。

今回のステラーラの小児UC適応追加申請は、特に難治性の小児患者さんを持つご家族にとって、大きな「希望の光」となるニュースです。重要なポイントを再確認しましょう。
- 成人UCで実績のあるステラーラ(ウステキヌマブ)が、小児UC(2歳以上18歳未満)の治療薬として国内で承認申請されました。
- 本剤は、寛解導入と維持の両方に適用が申請されており、小児UC患者さんの長期的な疾患管理とQOL(生活の質)向上に貢献することが期待されます。
- 現時点では審査段階であり、実際の治療で利用可能になるには、国の承認を待つ必要があります。
新薬の情報は常に変化しています。次回の受診時に、『このニュースを見ましたが、私の場合はどうですか?』と主治医に聞いてみましょう。
免責事項と参考リンク
本情報は、潰瘍性大腸炎における「ステラーラ」(ウステキヌマブ)の小児適応拡大の「申請」に関するものであり、現時点では小児患者に使用可能ではありません。小児UCの治療法については、主治医と密に連携し、最新の情報を参照してください。